「いや〜違和感しかないですね、今のところ」 昨日、ショッピング同行をさせて頂いたお客さまがこのように言いました。今回でお買い物にご一緒するのは3回目。ベーシックな衣服はある程度揃ったので、ここからは少しずつクセのあるアイテムを取り入れていく段階です。

人はだれでも、今まで経験したことのある服に対しては、特に違和感もなくすんなりと着れてしまうものです。ところが、今まであまり着たことがなかったり、苦手意識を持っているアイテムだと、間違いなく「違和感」を覚えます。

僕はこの「違和感」って、とても大切だと思います。違和感があるからこそ、新しい価値観が拓けるチャンスでもあるわけです。むしろ違和感がなかったとしたら、それは今までと大して変わらないということでもあります。

昨日のお客さんはもう3回ご一緒させて頂いているので、それなりに人間関係もできています。だからこそ、違和感があったとしても、僕は「違和感があるのはいいことですね。それじゃこれにしましょう！」と背中をポンと押させていただきました。

スタイリストの僕の役割というのは、「お客さんの好きな服」を選ぶことではありません。他者から見ておしゃれに感じる服を選ぶことが僕の役割です。お客さん自身が「違和感がある」と言ったとしても、それが次のステップとして重要なものであれば、思い切って背中を推すこともあります。

今まで見たことがない自分になってもらわなきゃ、高いお金を払って僕に依頼する価値はありませんから。今回はクセのある洋服もいくつかご提案させていただきました。とは言っても、これもさじ加減がとても大切です。あまりに難易度が高すぎるものは、やっぱり着こなせないし、結局着なくなってしまいます。

色々と試着をしていただいて、最初は違和感があっても、段々見慣れて、「なんとなくいいかもしれない」と思った服は、迷わずGOです。最初は違和感があったとしても、3分経てば見慣れてくるなんてことはよくあるんですよね。

似合う服の範囲を広げていく

昨日のお客さまはジーンズは中学生以来、まったく履いたことがないと言っていました。これはチャンス。一気に攻め込みます（笑） もうお客さんの中には、「ジーンズは自分には似合わないんだ」という固定概念でびっしり埋め尽くされています。でもそれは単なる食わず嫌いなだけです。ジーンズが似合わない人なんてそうそういませんから。

ジーンズにジャケットを合わせたりしながら、コーディネートの一部としてジーンズを使ってみる。そうすると違和感のないレベルまで感じてもらうことが出来るんですよね。こうなれば1つ、またコーディネートの幅が広がります。食わず嫌いはもったいないです・

ファッションというのは、このように固定概念を少しずつ塗り替え、「似合う服の範囲」を広げていくことが大切だと思っています。極論を言えば、自分が似合うと思えば、なんでも似合うんですよね。逆に自分が似合わないと思ってしまったら、どんな服でも似合わなくなるんです。

「自分に似合う服」とか、「自分に似合うカラー」とか、そんなものはマボロシみたいなもので、本来は存在しないんですよね。似合うも似合わないも自分で決めるんですよ。だからファッションには気合いが大切なんです。服に負けちゃいけない。どんな服でも似合わせるという気合いが大切です。

昨日のお客さまも、まだ買った服に違和感があるはずです。でも大丈夫。着ていれば否応なしに慣れてきますし、その服が似合っているかどうかは周囲の反応が証明してくれるはずです。1ヶ月後に、買った服が本当の意味で「自分のもの」になってくれたらそれでいいんです。

ファッションにおいて「違和感のある服」というのは、ある程度は積極的に取り入れるべきです。毎回じゃなくてもいいので、5回に1回は違和感のある服を取り込んで見ることが、古臭いファッションに陥らないためには大切だと思います。ぜひみなさんも試してみてくださいね。

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