「大山さんの本の通りに服を買って、その通りに着てみたのですが、なんかしっくり来ないです」 本を書いていると、ポジティブな意見だけではなく、このような少しネガティブ寄りのご意見をいただくこともあります。

確かに人の個性は十人十色で、僕のお伝えする「ファッションの基本」が誰にでも当てはまるとは思っていません。中には「合わない」という人がいたとしても、まったく不思議ではありません。そういった時には「お力になれなくて申し訳なかったな」と、ちょっと落ち込んだりもします。でも、それと同時に、「合わないと感じる理由」は他にもあるんじゃないかなとも思うわけです。というのも・・・

何を着ても似合う人。何を着ても似合わない人。

世の中には、どんな服を着ても似合ってしまう人と、何を着ても似合わない人がいます。それは身長とか、顔立ちとか、そういった持って生まれた才能に左右されるわけではありません。誰もが羨むような容姿を持っているのに、「自分には似合う服がない」と悩んでいる人もたくさんいます。

じゃ何が決定的に違うかというと、ファッション以前の気持ちの段階で、「服に自分が負けてしまっている」ことが一番の原因だと僕は考えています。いくら他人が「素敵だね」とか「おしゃれだね」と言ってくれたとしても、それはあくまで「他人の意見」であって、自分自身が「似合わない」と思ってしまったら、それはもう誰にも覆せないもので、【似合わない】という絶対的な事実になってしまいます。本人にとって。

実はこの段階でつまづいてしまっている人って、結構たくさんいるんですね。自分に対して自信が持てない人は、どんな服を着ても、「服に負けてしまう」んですね。これはもう他者が入り込むスキはありません。自分で解決するしかない。ファッションの問題以前に、自分に対する自己評価の低さが一番の問題だと思っています。

自分にとって「自信が持てる服」とは？

でも、どんなにファッションに自信がない人でも、今着ている服には、それなりの自信があるはずなんですよね。いつも着ているから、その服は特に違和感なく着れる自信があるわけですよね。このように、着慣れたものだったり、見慣れたものには、それなりの自信が誰にでも持てるんですね。

ようはこの「自信を持って着れる服」の範囲がどれくらい広いかどうかで、おしゃれかどうかは大きく変わるんですよね。先ほどの、どんな服でも似合う人というのは、「これは自分には着こなせるぞ！」という範囲が圧倒的に広いんです。そこが大きな違いです。勘違いでもなんでもいいんですよね。自信を持って着れるのであれば、なんだかんだでその服は似合ってしまうものなんです。

テリー伊藤さんって、奇抜な格好していますけど、似合っていますよね。渡辺直美さんもそうです。本人に圧倒的な自信があって、人が「これ、着こなせないわ〜」と思う服でも、ゴリッと自分のモノにしてしまうわけですね。これは圧倒的な自信に裏打ちされているものだと思います。

このように、ファッションというのは、僕が提唱するような「ファッションの基本」だったり、「カラー診断」や「骨格診断」といったテクニックや知識以前の、「気持ちの問題」というベースが最も重要なんです。ここがある程度整っているからこそ、初めておしゃれになるためのテクニックが活きてくるわけです。

見慣れない服の「倒し方」

じゃ、そういう場合はどうすればいいのかというと、これはとてもシンプルです。見慣れない服、着慣れない服でも、何度も着れば絶対に見慣れるものです。100回着てみて、最初の時のような違和感をキープしろと言われても、そっちの方が難しいですよね。このように自分にとっての「安心ゾーン」を少しずつ、無理やりでも広げていくこと。これしか解決法はありません。

似合う似合わないなんて、主観の問題であって、自分が自信を持って着れる服というのは、自分の力で切り開いていかなきゃいけないものです。そこには「気合い」だったり「思い切りの良さ」だったり、そういう泥臭い根性論が、なんだかんだで大切になってきます。

良くも悪くも、人はこちらのことなんてそこまで見ていません。あなたにとって気恥ずかしいと思うような「あまり着たことのない服」でも、他人から見れば、別に大して気になるものではありません。どんどんトライして、とことん自分に馴染ませることが大切です。

そしてこの作業を僕は未だに行っています。「これ、見慣れないな〜」とか、「これあんまり好きじゃないな〜」と自分がとっさに感じたとしても、そのアイテムに一定の好きだという人がいる限り、そのアイテムにはやっぱり魅力があるんですよね。それに自分が気づけないだけで。その「違和感」をとことん排除するのか、それともその良さに気付こうと少しでも歩み寄ってみるのか。このアプローチの違いが大きな差を生みます。

まずは無難な服ばかり着ればいいんです。僕が本で提案している服はどれも無難な服ばかりです。それでも、その無難な服の中にも、あなたがまだ経験したことのないものもたくさん含まれているはずですから、どんどんトライしてもらいたいと思っています。これは強引くらいでちょうどいいです。

そして気合いで着倒してください。居心地が悪くても全然OKです。それがむしろ正しいです。そのうち必ず見慣れてきますから。そしたら一気に価値観は広がります。だから僕は白パンを履けって本の中で言うんです。ハードルが高く感じるアイテムだからこそ、着こなせるようになった時に持つ意味は大きいからです。

「自信を持って着れる服」を。

結論。自分に似合う服というのは、「自分が自信を持って着れる服」です。自信を持てなきゃ、何を着たって、おしゃれにはなれません。そしてこの自信を持って着れる服の範囲を広げていくことが、おしゃれになるということなんだとみなさんには理解していただきたいと思っています。

ファッションの話なのに、最後には「気合いと根性」に行き着くのが僕の常套手段です（笑） 僕は根性論は大嫌いです。それでも大切なものは大切なんです。でも大丈夫。きっと似合う服は広げられます。コンプレックスの塊だった僕が言うんですから、きっと間違いないはずです。

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