ある時、気づいたんです。おしゃれにコーディネートしたはずのお客さんが、しばらく時間が経つと、元のファッションに戻ってしまうことに。これは衝撃的でした。でもこれって、考えれば当然のことなんですよね。

人というのは、変化をするのが苦手です。どんなに素敵に変わったとしても、新しい自分の姿に見慣れないと、結局元の自分に戻ろうという力が働いてしまいます。テレビでよくやっている「亭主改造計画」も同じです。あの一瞬はおしゃれに変わりますが、家に帰ってしばらくすると、結局いつもどおりのファッションに戻ってしまうはずです。

それくらい「変わる」ということは難しく、新しいファッションを継続することの方がよっぽど難易度が高いんですよね。パーソナルスタイリストという仕事を数年経験した中で、それは痛烈に実感しました。

おしゃれな状態をキープすることの難しさ

もう少し分かりやすい例を出すと、美容室でかっこいいヘアスタイルにしてもらうとします。その時はいいですよね。プロに切ってもらって、プロにヘアッセットしてもらうわけですから、確実に素敵なヘアスタイルが実現できます。問題は次の日からです。格好いいヘアスタイルを自分でセットしなきゃいけない。ここが一番難しいわけです。

どんなに素敵なヘアスタイルであっても、自己管理ができなきゃ、素敵には見えないです。僕の知人でも、「いつも○○という美容室で切っています」という方は多いんですが、残念ながら全然素敵に見えない。どんなに優れたカリスマ美容師（懐かしい響き・・・）に切ってもらっても、それを毎日自分で再現できなければ意味がありません。

それは僕のスタイリングも同じです。スタイリストと一緒に買い物に行って、素敵な服を買い揃えたとしても、自分で日々コーディネートできなきゃ意味がないですし、自分で買い物に行くときにも、「おしゃれな服を選ぶ方法」を知らなければ、一生スタイリストと一緒に買い物に行かなきゃおしゃれがキープできないわけですよね。でもそれって、現実的ではありません。一生パーソナルスタイリストに頼むなんて。

やっぱり自分の服は自分で選ばなきゃいけない。素敵な服は自分で選べるようにならなきゃいけない。いっとき、スタイリストにお世話になったとしても、ほとんどの人はまた元に戻ってしまうんです。そのことに薄々気づき始めたときから、僕はパーソナルスタイリストとしての仕事を徐々に手放し始めました。

おしゃれの方法を知るということ

僕がやりたいのは、短期間だけおしゃれになってもらうことではないんですよね。おしゃれな状態を自分自身でずっとキープし続けてもらうこと。これからの人生は自分自身で素敵な服を選べるようになって欲しいと願っています。

そのためには、スタイリストが服を選ぶだけじゃ全然ダメです。なぜなら「僕が服を選んであげちゃっているから」。自分の意思じゃなくて、人任せ。それではおしゃれをキープすることはできません。キープの仕方を知らないわけですから。そうじゃなくて、自分で服を選べるようになり、それをキープするための方法を知ることが大切なんですよね。

だから僕が常に意識しているのは、「おしゃれの基本をお伝えすること」です。そう考えると、僕がやりたいことは、スタイリストというよりは、おしゃれの方法をお伝えする「教育」に近いと思っています。だから最近では本を書いていますし、オンラインスクールの運営に力を入れています。

「スタイリストに服選びを任せる」というスタンスじゃなくて、自分で服選びの方法を知り、ファッションを自発的に楽しんでもらいたい。こういった理由で僕は個別のスタイリングをどんどん減らしています。

知識×経験がセンスに変わる

今、僕の個別スタイリングは経営者の方や専門家の方など、服選びを外注したい方だけに絞っています。みなさん時間短縮や効率化を目指して僕にスタイリングを依頼しています。そもそも自分で選べるようになりたい、という意思があまり強くありません。そっちの方が僕はスタイリストとして、お客さんを素敵にすることだけに集中できるのでいいんです。

お客さんに素敵になってもらって、ビジネスの場面でますます活躍してもらうのを手助けする。それが今の僕のスタイリングの目的です。だからお付き合いする期間もすごく長いです。年に2回だけ会って一気に服を買う、そんな感じです。

スタイリストにファッションは完全に任せたいというのであれば、パーソナルスタイリストに依頼するのもいいと思います。でも自分で服を選べるようになりたいのであれば、「おしゃれの方法」や「おしゃれになるための心構え」を知ることがものすごーく大切だということをぜひ皆さんにも理解してもらいたいと思います。

何事も上達するためには、正しい知識を身につけて、あとは経験を増やすのみです。知識×経験がセンスに繋がると僕は考えています。

まずは自分のファッションを人任せにするのではなく、自分で自発的に管理をすることを意識してください。そのために、方法論をプロから聞くというのであれば素晴らしいと思います。僕は書籍だったり、オンラインスクールを通して、自発的におしゃれを学べる場を提供していきたいと思っています。

本の読者の方や、オンラインスクールの利用者の方から、「最近、”センスいいですね” と褒められることが増えました」とよく報告されます。これが一番うれしいですよね。やっぱりおしゃれというのは、自発的に楽しむ方が絶対に喜びも大きいはずだと思っています。

スタイリスト大山シュンのコンテンツ一覧

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